ポケモンの世界で一番“住みやすい”地方はどこか — 全10地方を8軸80点でランキング付けした結果
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ポケモンの世界で一番“住みやすい”地方はどこか — 全10地方を8軸80点でランキング付けした結果

「ポケモン世界で一番住みやすい地方はどこ?」

この問いは、ポケモンファンの飲み会で必ず一度は飛び出します。そして大抵は「ホウエンは海がきれいだから」「シンオウは寒そうだから」という印象論の応酬で終わる。きれいな海に住みたいのか、安全に暮らしたいのか、グルメに飢えているのか——基準がバラバラなままでは、議論が収束するはずがありません。

不動産広告の言葉を借りるなら「駅チカ・南向き・伝説のポケモンなし」。謳い文句は誰でも書けます。問題は、実際に住んだらどうなるかなのです。

そこで本記事では、ゲーム本編で確認できる事実だけで、10の地方を同じ物差しにかけてみます。判断材料は事件、気候、交通、生活、食、経済、教育の8軸。全10地方×8軸ぶんの採点理由は、すべて本文に書いておきます。

あなたの推し地方が何位になるのか、読みながら確かめてみてください。たぶん、途中で「そこは違うだろう」と声に出したくなるはずです。それが狙いです。

審査方法 — 8つの評価軸と採点ルール

まず審査基準を明示します。各地方を次の8軸で採点し、各軸10点満点・合計80点満点としました。

01治安・事件悪の組織の数と事件の規模。強盗で済むのか、世界滅亡級なのか
02気候・災害火山・砂漠・豪雪・異常気象の有無と生活への近さ
03野生の危険度危険なポケモンが生活圏からどれだけ近いか、行政管理はあるか
04交通・アクセス道路・鉄道・船・空の整備と地理的障害
05生活・都市機能ポケモンセンター・商業・娯楽の密度と偏り
06食・グルメ特産品・名物・食文化の厚み
07経済・産業主要産業の多様性と雇用の安定
08教育・文化学校・文化施設・住民の気質

ルールは次の3つです。

  • 同点の場合は「治安・事件」の得点が高い方を上位とする(住みやすさの根幹は、やはり身の安全)
  • 出典はゲーム本編とその設定。アニメオリジナルの要素(オレンジ諸島等)は対象外
  • ヒスイ地方だけは時代設定が「遠い昔」のため、現代の地方と同列にするのは不公平です。よって参考記録(順位外)として別枠審査します

なぜその点数なのか、読みながらつっこんでもらえる。印象だけのランキングとは、そこが違います。

総合ランキング — まずは結果から

1位
パルデア大人の犯罪組織がなく、学校が生活の中心にある
62 /80
2位
イッシュ交通は唯一の満点。だが「治安が悪い」街が公式設定
62 /80
3位
ジョウトリニア・百貨店・ミルク・行政対応。堅実な古豪
61 /80
4位
アローラ常夏・多文化・動物愛護先進地。事件後の再生もある
60 /80
5位
ガラル悪の組織ゼロは快挙。ただし天候が暴れ、巨大化ポケモンが湧く
54 /80
6位
ホウエン産業・文化は最高水準。ただし世界滅亡級の災害を複数回経験
51 /80
7位
カントー気候安定は別格。ただし暮らしのインフラが質素すぎる
50 /80
8位
カロスおしゃれは殿堂級。ただし全土の電力を一つの発電所に頼り、食が薄い
49 /80
9位
シンオウ何でも揃っているのに、事件も気候も全部が過酷
47 /80
参考
ヒスイ時代差で参考記録。野生が人を直接狩る世界
19 /80

では、下位から順に見ていきます。

9位

シンオウ地方全ての要素が揃っているのに、全部が過酷

47 /80
「文化・福祉・エネルギーは最高級。天気と事件だけは保証対象外」
シンオウ地方のマップ
シンオウ地方のマップ(ゲーム画像より)
審査カード8軸 × 10点
治安3/10湖爆破・町爆破未遂・時空破壊。計画の凶悪さは歴代最高
気候3/10「気象の変化が非常に激しい」と公式明記。あられ・吹雪・霧・砂嵐・火山灰の全部盛り
野生4/10全道路最高レベル帯(Lv55超)・危険海域・「あの世」の洞窟
交通6/10地下通路網・跳ね橋・砕氷船は独創的。ただし山・雪・霧の陸路障害が最多
生活7/10福祉先進都市と水没町の格差が大きい
食7/10ポフィン・はちみつ・曜日替わり市場とそれなり
経済8/10石炭+風力+太陽光の近代的エネルギーミックス
教育9/10図書館・神話・遺跡・GTSと文化深度は歴代級
合計 47 / 80

事件の話

まず、シンオウで何が起きたのかを順番に並べてみる。

  • 風力発電所の占拠
  • 住民への襲撃と、商品強奪の未遂
  • 歴史あるカンナギタウンを町ごと爆破しかけた
  • リッシ湖を爆破して干上がらせた——湖面には力なく跳ねるコイキング
  • 極めつけは「やりのはしら」でのディアルガ・パルキア召喚。時空そのものが破壊対象になった

強盗や窃盗で済んでいたかつての事件と比べると格が違うし、トバリシティではギャンブルで破産する住民まで出ます。世界規模の災害を起こしかけた回数では、他の追随を許しません。

住み心地の話

気候の過酷さに関しては、見本のような地方です。北部の216・217番道路は常にあられが降り、深雪に足を取られ、さらには幽霊の噂まである。キッサキシティは自転車に乗れないほどの豪雪地帯です。東の228番は砂嵐の砂漠、その隣の227番は活火山の火山灰、山岳部は吹雪、峡谷は濃霧。「気象の変化が非常に激しい地方」と資料に書かれるほどです。

一方で、暮らし側の工夫は先進的です。地下には通路網「ちかつうろ」が張り巡らされ、ミオシティには船が通るたびに跳ね上がる橋があり、北へ向かう砕氷船まで就航しています——ただしこの船、リーグ優勝者しか乗れないという身分制つきですが。

都市の個性も濃い。コトブキシティは「眠らない町」の異名をもつ石畳と噴水の大都市。ヨスガシティは「人にもポケモンにも優しい町」を掲げる福祉先進都市で、公式の街案内には「人々やポケモンが集まり、商業の発展とともにできあがった友好の街」とある。段差や坂が一切ないフラットな町並みや憩いの施設まで案内文に挙げられていて、作中のNPCはここをシンオウ地方の「住みたい街ランキング1位」と評します。町には老人も赤ちゃんも行き交っている——その一方でシンオウは、福祉のヨスガと、ギャンブル破産者の出るトバリを同じ地方に抱える格差の土地でもあり、ノモセに至っては町の4分の1が水没しています。

ヨスガシティの街並み
ヨスガシティ。ゲーム内の説明は「心が離れ合う場所」(ゲーム画像より)
ここだけの話

なぜここまで事件が起きるのか

シンオウの名の由来は「神奥」。神話・図書館・遺跡の文化深度は歴代でも屈指で、ミオ図書館にはシンオウ神話の蔵書が並び、世界中のトレーナーと交換できるGTSの国際性まである。スピリチュアルな文化の土地だからこそ、時空を操る事件が起きる——土地の魅力が、事件の質と連動してしまっている。シンオウの構造的な不幸はここにあります。

ひとことで言うと

エネルギーは石炭・風力・太陽光と近代的、文化は最深、福祉先進都市もある。素材は最高級なのに、事件の凶悪さと気候の過酷さが全部を台無しにする。もっとも惜しい9位。

8位

カロス地方地上はおしゃれカフェ、地下は兵器研究

49 /80
「地上はおしゃれカフェ、地下は最終兵器の研究施設。内見は必須」
カロス地方のマップ
カロス地方のマップ(ゲーム画像より)
審査カード8軸 × 10点
治安5/10敵ボスが実業界トップ。発電所占拠で最大都市が実際に停電
気候6/10温暖基調だが南部砂漠+北部豪雪。積雪の原因がジム、という事情あり
野生7/10危険区域は北と端に偏在。都市圏は比較的安全
交通6/10モノレール・列車があるのに乗れる区間が限られる。水道はなし
生活8/10おしゃれインフラは歴代唯一。ただしミアレ一極集中
食3/10美食の国モチーフなのに、食の看板が敵のカフェ
経済6/10ボール工場・出版と産業はある。だが企業トップが事件の首謀者
教育8/10宮殿・城下町・観光遺産の厚みは歴代級
合計 49 / 80

事件の話

カロスの事件が異様なのは、敵のボス・フラダリが「成功した経営者」だった点です。地上でおしゃれなカフェを営みながら、地下で最終兵器の研究——最初から経済と犯罪が一体でした。

  • 科学者アケビが全電力を賄う発電所を乗っ取り、ミアレは本当に停電。前半はサウスサイドストリートしか入れない
  • ボール工場の乗っ取り・社長脅迫・雪山での伝説級捕獲未遂
  • 地下からは3000年前の最終兵器が発掘。殿堂入り後も四天王の一人が大幹部と発覚

規模こそ世界滅亡級ではないものの、都市部を直撃する回数は歴代上位です。

住み心地の話

生活面のカロスは、ある意味で歴代最高に贅沢です。ミアレシティはカロス最大の巨大都市で、ポケモンセンターが3つもあり、プリズムタワーがジムを兼ね、博士の研究所まである。美容室・ブティック・撮影スタジオという「おしゃれインフラ」はシリーズでここだけ。ミアレには「スタイリッシュ度」という独自の社会指標まであり、サービスの利用に関わってきます。ホテルでは欧州式のチップを渡せます(任意で、断っても問題ありません)。

ミアレシティの街並みとプリズムタワー
カロス最大の都市ミアレ。奥に見える塔がジムを兼ねるプリズムタワー(ゲーム画像より)

ただし、である。美食の国フランスがモチーフなのに、ご当地グルメの記録が異様に薄い。看板となるカフェはフラダリの店で、地下は兵器研究のラボ。町の西には「かつて悲しい出来事があり寂れた」とされるホテルの廃墟があり、火曜日にはゴミ箱にロトムが潜んでいます。美しい町並みの割に、食の厚みだけが、ぽっかりと空いている。これがカロスです。

ここだけの話

なぜエイセツだけ雪が積もるのか

地味だけど、けっこうすごい事実があります。カロス最西部のエイセツシティは一面雪に覆われていますが、この雪、気候のせいではありません。町の中央にあるポケモンジムと、そこにいるユキノオーの冷気のせいで雪が積もっているのです。温暖な地方に「ジムの設置場所で生まれる冬」がある。つまりカロスでは、住環境がジムリーダーの人選ひとつで変わる。学区ならぬ「ジム区」が実在する土地なのです。住む場所選びというテーマでは、かなり強烈な制度です。

ひとことで言うと

おしゃれに生きるなら殿堂級。だが電力を一つの発電所に全頼りしていて、その発電所を敵に取られた実績がある。食も含め「暮らしの基本」が抜けていて49点。

7位

カントー地方空気は変わらない。自転車は100万円

50 /80
「天候の変化なし・災害ゼロ。生活インフラは自己責任で」
カントー地方のマップ
カントー地方のマップ(ゲーム画像より)
審査カード8軸 × 10点
治安6/10組織は1つで規模は強盗〜企業占拠止まり。だが最大都市が街ごと占領された実績
気候10満点天候の変化が一切ない、シリーズ唯一の「気候満点」
野生7/10危険区域は都市から遠く隔離済み。ただし道端に幽霊とカビゴン
交通4/10鉄道なし。自転車100万円。船は年に1回
生活6/10商業は2極集中。出発の町にはセンターもショップもない
食2/10レストランはあるが入れない。食文化は歴代最薄
経済7/10大企業の城下町。サファリ入場500円の物価の謎
教育8/10学校・博物館・道場・リーグ本部と文化施設は充実
合計 50 / 80

事件の話

元祖カントーの事件は、規模こそ小さいものの、身近さの点では歴代屈指です。

  • ハナダシティ: 構成員が民家に不法侵入し、家中を荒らして技マシンを強奪
  • お月見山: 化石の強奪未遂
  • 24番道路: 「金の玉」をくれる親切な男性の正体は、組織のしたっぱ(詐欺)
  • タマムシシティ: 日中から構成員が街中を堂々と歩き、池にはベトベターが出没

資料には「治安や環境はあまり良くない様子」とまで書かれています。

動機は思想でも復讐でもなく、ただの金儲け(ゲームコーナー経営が資金源)。そしてピークは最大都市ヤマブキシティが街ごと占領され、四方のゲートが封鎖された時。ボスのサカキがトキワシティのジムリーダーを兼務していたことも発覚します。公共的地位と犯罪組織のトップが同一人物なのです。

住み心地の話

ここまで書くと危険な地方に聞こえますが、カントーの最大の強みは別のところにあります。天候の変化が一切ないこと。砂嵐も豪雪も雷雨も起きない、歴代で唯一「気候満点」をあげられる土地です。災害リスクという観点では、実は最も穏やかな地方です。

問題は、暮らしのインフラです。

鉄道はありません。移動は徒歩と船。自転車はありますが、価格が100万円です。念のため説明すると、ポケモン世界の所持金上限は99万9,999円。つまり現金では買えない。購入には引換券が必要で、発行元は大企業の社長です。ある道路では「自転車必須」なのに、その自転車が現金購入不可能——初代から続く謎インフレです。自転車100万円とサファリ500円が同居する物価は、カントー経済の闇です。

100万円自転車の価格
(所持金上限は99万9,999円)
500円サファリゾーン入場料
年1回クチバに寄る豪華客船
100万円のじてんしゃ
あの100万円じてんしゃ。公式キャンペーンで現実にも配布された(公式画像より)

船も、クチバに寄る豪華客船は年に1回。出発点のマサラタウンにはポケモンセンターもショップもなく、帰省しても実家の母親が回復を代行してくれるだけ。研究町のグレンタウンには民家が存在しません。

道端の危険にも、初代らしい味わいがあります。図鑑の説明文には、生活の脅威ばかりが並んでいます。

うすい バルーンじょうの からだに もうどくの ガスが つまっている。ちかくにくると くさい。

図鑑より — ドガース(赤・緑)

たべたユメは ぜんぶ おぼえている。こどもの ユメのほうが おいしいので めったに おとなの ユメはたべない。

図鑑より — スリープ(銀)

毒ガス、夢泥棒、夜の墓場、道路を塞ぐカビゴン——危険はあるけれど、砂嵐のような自然の災厄ではなく、生活環境の問題として記述されるのがカントー流です。

食はもう、どうしようもないくらい薄い。タマムシにレストランはありますが、主人公は入れない。食と言えば、タマムシデパート屋上の自動販売機3種(おいしいみず200円・サイコソーダ300円・ミックスオレ350円)くらいです。初代ではこの飲み物を渡すと技マシンと交換してくれたため、飲食物というより文化財に近い扱いでした。

ここだけの話

カントーが何もない理由

見方を変えれば、カントーの質素さは全て「最初に作られた」ことの証です。トレーナー学校・科学博物館・格闘道場・リーグ本部——文化施設の履修は実は揃っていて、ポケモン塔という供養文化まである。後続地方が追加していった生活機能(百貨店・名物・マスコミ)が、単にまだ発明されていなかった。10歳で旅に出る世界観の出発点として、あえて何もないまま放置された場所、それがマサラタウンなのです。

ひとことで言うと

気候だけは文句なしの満点。だが交通・食・地方部の生活機能が置き去りで、トータル50点。印象点では上位、実住性では中位。

ここまでが「素材は最高級なのに、何か一つが決定的に欠けている」グループです。ここから先は、表彰台をうかがう中位陣——まずは世界滅亡級の災害を経験した、自然の豊かな地方から。

6位

ホウエン地方住むには魅力的、ただし世界が滅びかけた

51 /80
「海も空も産業も豊か。世界が滅びかけた回数だけはご容赦を」
ホウエン地方のマップ
ホウエン地方のマップ(ゲーム画像より)
審査カード8軸 × 10点
治安4/10組織が2つ。伝説覚醒で世界規模の災害を起こした実績
気候3/10砂嵐・火山灰・豪雨・活火山・隕石。振れ幅は歴代最大
野生5/10色が見えないポケモンが町に出没。超古代の謎だらけ
交通5/10船・ロープウェイ・自転車2種と選択肢は豊富。ただし海に阻まれる
生活8/10都市16は歴代最多。保養地から筏の町まで個性分化
食8/10ポロック・せんべい・温泉・海の家と食レジャー充実
経済9/10宇宙センター・天気研究所・造船・ガラス職人の先進産業群
教育9/10コンテスト本場。博物館2つ(入場50円)
合計 51 / 80

事件の話

ホウエンの事件は、過激派どうしの対立が引き金でした。悪の組織は2つあり、どちらも「正しい世界」を掲げた理想主義者です。

マグマ団「陸を広げたい」。伝説・グラードンの力で大地を増やし、世界を作り替えようとした
VS
アクア団「海を広げたい」。伝説・カイオーガの力で海面を上げ、世界を作り替えようとした

手口のラインナップはこちら。

  • 海の科学博物館の占領
  • 廃墟の地下都市での発電マシン暴走
  • 天気研究所の占拠・隕石の強奪

そして対立の果て、超古代の伝説ポケモンが覚醒し、干ばつと大雨で世界規模の災害が起きます。被害はルネシティ周辺に集中。強盗や占拠の次元を完全に超え、巻き込まれる住民側からすると、動機が綺麗なぶんタチが悪い話でした。

住み心地の話

気候の当たり外れが、歴代で一番激しい土地です。砂漠地帯は常時砂嵐。ある道路では火山灰が降り続け、ガラス職人がその灰をビードロに変えて生計を立てています。ある都市は「屈指の豪雨地帯」で、別の道路では雷を伴う豪雨。活火山もあり、隕石も落ちます。一方で風向きの恩恵で火山灰が届かない高地の町は「空気が澄んだ療養地」として人気です。同じ地方内で療養地と砂嵐地帯が共存する、住む場所選びが運になる土地です。

交通は個性的です。カイナ〜ミナモを結ぶ連絡船タイドリップ号、活火山へ架かるロープウェイ、マッハとダートの2種の自転車。ただし海の阻害も深刻で、南の水道は海流に流されたら後戻りできない構造、水上都市ルネシティは空かダイビングでしか外部と接続しません。橋を架ければいいのでは、という人類の知恵がまだ届いていないのです。

都市は16と歴代最多。観光地ミナモ(デパート・美術館・ほりだしもの市)、港町カイナ(バザー・造船所)、学園都市カナズミ(スクール・大企業本社)と個性が揃います。南の島にはサニーゴの群れの上に筏を並べた町まである。船で暮らす人々の多様な住まい方という点では、ホウエンの右に出る地方はありません。なお、地下都市計画が頓挫して廃墟になったニューキンセツが放置されている点は、バブルの遺物として印象的です。

ここだけの話

ホウエンという名前の意味

ホウエンの名の由来は「豊縁」——ポケモンと人、人と人の縁が豊かである意味だそうです。事実、コンテスト文化の本場で、優勝すると美術館に絵が飾られる。きのみを収穫してポロックを作り、温泉に入り、海の家でサイコソーダを飲む。暮らしを楽しむ文化は、この地方で初めて完成したと言えます。だからこそ、その暮らしを世界級の災害が繰り返し脅かすという構図が惜しい。51点の内訳は「暮らしの豊かさ」と「災害の記録」の綱引きそのものです。

ひとことで言うと

産業(宇宙センター・気象研究)・文化・食は最高水準。だが組織2つ+世界級災害+気候の振れ幅が足を引っ張る。好きな人は多いだろうが、実住性の数字は動かせない。

5位

ガラル地方悪の組織がいない。でも天候と巨大化が暴れる

54 /80
「悪の組織ゼロは保証します。巨大ポケモン常時湧きと天候急変は保障外」
ガラル地方のマップ
ガラル地方のマップ(ゲーム画像より)
審査カード8軸 × 10点
治安9/10「悪の組織」が存在しないのはシリーズ唯一。最大事件の犯人は権力者本人(動機は防衛)
気候3/10ワイルドエリアの天候は「訪れる毎に変化」。寒帯の温泉町もある
野生4/10巨大化ポケモンが常時湧くパワースポットの国
交通6/10鳥型タクシー等ユニーク。ただし整備状況の記録は薄い
生活8/10計画都市・工業都市・城壁都市・温泉町と役割分担が明確
食9/10カレー図鑑。ご当地グルメの完成形
経済8/10バトルのプロスポーツ産業化+エネルギー企業
教育7/10スタジアム観戦文化。学校の記録は薄い
合計 54 / 80

事件の話

ここまでの地方と違い、ガラルには「悪の組織」と呼べる存在がいません。シリーズで初めてのことです。

一応、騒動の種はあります。マリィの後援者集団「エール団」の迷惑行為や、まどろみの森の兄弟による「くちたけん」「くちたたて」盗難程度。拠点のスパイクタウンは街全体がジムのようになっている変わり種です。

そして、ガラル史上最大の事件だけは別枠で語る必要があります。起こしたのは、リーグ委員長ローズ——ダイマックスを導入してリーグを世界的に有名にした実業家——本人。流れは、こんな具合です。

  • 2万年前ムゲンダイナが巨大隕石(巨大なねがいぼし)としてガラルへ飛来する
  • 3000年前最初の覚醒で大災害「ブラックナイト」が発生。地方中のポケモンが強制ダイマックスして暴走し、2人の若者とザシアン・ザマゼンタがこれを鎮めた
  • 現代ローズが1000年後のエネルギー危機を懸念し、対策としてブラックナイトを3000年ぶりに人工的に再現。チャンピオン・ダンデすら捕獲に失敗して敗北し、主人公たちが錆びた剣と盾で伝説を呼び出して鎮圧した
夜のスタジアムに現れたムゲンダイナ
リーグ決勝の夜、目覚めたムゲンダイナ(ゲーム画像より)

住み心地の話

ガラルの都市は、役割分担がはっきりしています。

都市どんな街か
シュートシティローズが造った計画都市。企業本社のローズタワーと、チャンピオンカップ開催のスタジアム
エンジンシティ工業都市
ナックルシティ中世の城壁を活かした歴史ある街。ジムミッションはスタジアムではなく宝物庫で行う
ターフタウンすり鉢状の地形に石碑が並ぶ。西部には地上絵
キルクスタウン気候こそ寒帯だが、温泉とホテルの観光業が盛んな保養地

ジムがスタジアム形式で、ジムリーダーは3桁の背番号入りのユニフォームを着るプロフェッショナル。リーグカードという選手カード文化まである。バトルがプロスポーツとして市民生活に根付いているのは、この地方の最大の特徴です。

食の看板はカレー図鑑でしょう。キャンプで作るカレーライスに図鑑がついていて、品種を集めながら食べる。開発者は「現実に存在する食べ物が出てくれば、ゲームの世界にもっと親しみを持ってもらえる」と語っており、英国でカレーが国民食である実文化がそのまま反映されています。ご当地グルメを「図鑑で数える」という発想の狂気——これは他地方の名物(火曜限定アイス、揚げ菓子)を超越した、食品コレクション文化の完成形です。

キャンプで作るカレー
キャンプでカレーを作る様子。出来たカレーは図鑑に記録されていく(ゲーム画像より)

ただし、です。ワイルドエリアの天候は「場所や日によって異なり、訪れる毎に変化がある」のが公式の説明。同じ国の中で晴れの隣に吹雪が降り、その隣で雷が鳴る。さらに巨大化(ダイマックス)したポケモンが常時湧くパワースポットだらけの国で、4人で討伐に出る「レイド」が日常の風景になっています。そして北東の田舎町スパイクタウンはパワースポットがなく、ポケモンセンター以外の施設が無い。巨大化災害から取り残された格差の町です。

ここだけの話

ガラル最大の事件の中身

悪の組織がいないのに、事件がゼロではない。ガラルの事件は「後援者の熱量」「兄弟の盗難」「権力者の暴走」と、個人の失敗の積み重なりで起きています。組織的な悪意ではなく、人間の弱さが事件になる。これはこれで、住む側からすると「対処のしようがある種類の危険」です。治安9点の根拠はそこにあります。減点分は、全部空とパワースポットのせいです。イギリスがモチーフであることが、天候以外の全てを説明してくれます。

ひとことで言うと

治安は歴代ベスト級、食も文化も強い。だが気候の暴れと巨大化災害で大きく失点。安定を求める人には向かない54点。

4位

アローラ地方常夏と多文化と、事件後の再生

60 /80
「常夏の多文化リゾート。動物愛護先進条例・家が船でも可」
アローラ地方のマップ
アローラ地方のマップ(ゲーム画像より)
審査カード8軸 × 10点
治安8/10組織は非行集団レベルで「世間にあまり脅威視されていない」。裏の黒幕は個人の異常
気候6/10温暖基調。ただし砂漠・雪山・廃墟が同居
野生7/10ぬしポケモンはいるが、人の直接被害の描写は薄い
交通7/10ひでんわざ禁止法+ポケモンライド+路線バス。自転車はない
生活9/10移民町2つ・最大リゾート・船で暮らす海の民と多様
食8/10マラサダ・食堂の娘・ポケモンのお菓子
経済8/10財団・リゾート・牧場・リサイクルと穏やかな構成
教育7/1011歳の儀式が教育制度化。リーグは新興
合計 60 / 80

事件の話

組織・スカル団は歴代で際立って小さい。ボスのグズマは地元の不良集団の親玉程度で、活動も迷惑行為止まり。資料には「世間にはあまり脅威視されていない」と書かれるほどです。

ただし裏はあり、スポンサーの巨大財団代表がひとりで崩壊したのが本当の事件でした(気に入ったポケモンを氷漬けにする異常行動の末、異空間へ突入・暴走)。そして終わり方が特別で、グズマは解散を宣言ししまキングのもとで相撲修行を再開。事件を起こした人間が、土地の文化の中で立ち直るまでが描かれる稀有な地方です。

住み心地の話

アローラの制度で最初に挙げたいのが、「ひでんわざ」の使用を法律で禁じ、代わりの移動手段としてポケモンライドを用意した仕組みです。ポケモンに無理やり技を使わせない——動物愛護の思想が法制化された、他に例のない先進条例です(移動がポケモン頼みになる副作用はありますが)。山へはナッシーの路線バスで向かいます。

宮崎交通のナッシーバス
実は現実にも、モデル地の宮崎交通でナッシーバスが運行中(写真は公開資料より)

多文化の色も濃い。カントー・ジョウトからの移民が築いた港町が2つあって、一方はカントー色、もう一方はジョウト色の町並み。地方最大の都市には近代的な暮らしがあり、別の島では船の上で暮らす海の民もいます。最大級のリゾート地では、ナマコブシ投げのバイトが募集されている(謎の求人ですが)。閉店したスーパーの跡地も残っていて、廃墟となった店の看板まで生活感がある。

食といえばマラサダでしょう。移民の文化が混ざり合ったこの地方の名物は、揚げたパン生地の菓子。主要キャラの一人がこれを片手に暮らす描写が物語を貫き、町の食堂の娘が主要人物になっている——食と人物が結びついた物語構造は、この地方から顕著になりました。

マラサダを頬張るハウ
マラサダを片手に生きるハウ(公式画像より)
メモ: 常夏だって雪は降る

同じアローラの中に、夜になると砂嵐の吹き荒れる砂漠・地方最高峰の雪山・雪の降る廃墟の村が共存しています。常夏目当てで引っ越すと、冬を引くこともあるので要注意。

ここだけの話

ジムの代わりにある「試練」

アローラにはポケモンジムが存在しません。代わりに各島の「試練」と、しまキング・しまクイーンの「大試練」からなる島巡りが、11歳の儀式として制度化されています。ジムという「公式戦の施設」ではなく、島ごとの守り神と人間の関係の中で子供が育つ。住みやすさ議論で「教育」を語るとき、この地方の制度は独特の完成度があります。リーグ自体は物語の終盤にようやく創設される新興もの——伝統がないぶん、文化はまだ育ち途中です。

ひとことで言うと

常夏・多文化・動物愛護法制・事件後の再生まで揃った優等生。減点は停電の前科と、島ごとの気候差、異空間リスク。あと一歩で表彰台の60点。

60点の壁を越えたのは4地方だけ。残るは堅実な古豪、近代化の旗手、そして「学校」の地方——表彰台レースの始まりです。

3位

ジョウト地方リニアも百貨店もミルクも、堅実な古豪

61 /80
「リニア通勤・百貨店・創業500年の薬屋。堅実さは老舗の証」
ジョウト地方のマップ
ジョウト地方のマップ(ゲーム画像より)
審査カード8軸 × 10点
治安6/10事件の質は悪化(生体実験)したが、警官パトロール等の行政対応も初めて明記
気候7/10温暖な平野と豪雪山岳の二層構造
野生6/10入山許可制など危険区域の行政管理が先進的
交通9/10リニア+定期船(週2便)+徒歩圏生活。選択肢最多級
生活9/10史上最大の百貨店(8階層+地下商店街)・整備された公園
食9/10地名冠まんじゅう・牧場ミルク・500年の製薬
経済8/10職人・牧場・製薬・メディアの多角化。大企業依存なし
教育7/10遺跡・伝承・定期イベントと文化は厚い。ただし自前のリーグなし
合計 61 / 80

事件の話

ジョウトでは、事件の質が前代より明確に悪化しました。

3年前に壊滅した組織の残党が再興を目論み、手口をエスカレートさせていきます。

  • 研究所に侵入してポケモンを強奪
  • ヒワダタウンでヤドンを誘拐。「高値で取り引きされる尻尾」目当ての密売だった
  • 大都市コガネでラジオ塔を占拠し、放送を乗っ取る
  • 極めつけはチョウジタウン。土産物屋に偽装した地下3層の大規模アジトから怪電波を送信し、湖のコイキングを無理やり強制進化させた

温和なポケモンを凶暴化させる、いわば生体実験です。ただしこの地方にはもう一つの顔があって、警官がパトロールする道路がゲーム内で明記される初の地方。さらにアジト壊滅後の土産物屋は普通の店として営業を再開します。事件と、行政の対応と、再生がセットで描かれた土地です。

住み心地の話

ジョウトの生活インフラは、堅実なまでに揃っています。

交通はリニア(マグネットトレイン)で大都市コガネ〜ヤマブキ(隣のカントー)を直結。定期船はアサギ〜クチバを月曜と金曜の週2便で運航しています。鉄道と船と徒歩圏の生活——移動手段の選択肢では歴代でも屈指です(リニアの部品を盗まれると止まるという事件もありましたが)。

商業の中心コガネには、地下2階から6階まで8階層+地下商店街という「シリーズ史上最大」の百貨店があります。自然公園は整備され、虫取り大会は週3回開かれる定期イベントになっています。管理の行き届いた土地柄が出ているところです。

食と産業のラインナップも見事です。チョウジ名物・いかりまんじゅう。モーモー牧場直送のミルク。ヒワダの炭。そして創業500年のタンバくすりやの秘伝の薬。老舗の薬屋が500年営業を続け、牧場があり、炭焼き職人がいて、ラジオ局があり、伝統工芸のボール職人がいる——大企業一社に依存しない職人経済がここには成立しています。カントーがシルフ一社の企業城下町だったのと対照的です。

文化も厚い。遺跡・伝承・まいこはんの舞踊。エンジュシティには150年前に落雷で焼けた「やけたとう」が今も残ります。旧名カネのとう、スズのとうと対をなす九重の塔です。火災で命を落とした名もなき3匹は、伝説のホウオウの手でライコウ・エンテイ・スイクンとして蘇生したと語り継がれています——都市の事故の歴史が、戒めとして建物ごと保存されているのです。アサギの灯台には病気のデンリュウ「アカリちゃん」がいて、ジムリーダーのミカンが看病している。住民とポケモンの関係が、町の伝承レベルで語られる土地です。

エンジュシティのやけたとう
今も残る「やけたとう」(ゲーム画像より)
ここだけの話

自前のリーグを持たない地方

そして、重大な減点要素があります。ジョウトには自前のポケモンリーグがありません。トレーナーは隣のカントーにあるリーグへ挑戦する構造です。文化・商業・産業が全て揃った地方でありながら、サッカーで言えば「スタジアムは隣の県にある」状態。若者の挑戦の場だけが、隣に借りている。これを「洗練された成熟」と見るか「暇な老成」と見るかで、この地方の印象は大きく変わります。

ひとことで言うと

事件の質の悪化(生体実験)が響いたが、交通・商業・食・産業・行政対応の堅実さは随一。3位はだてではない61点。

2位

イッシュ地方交通は満点。ただし「治安が悪い」街が公式設定

62 /80
「橋5本・地下鉄・空港の好立地。夜はお引きこもりを」
イッシュ地方のマップ
イッシュ地方のマップ(ゲーム画像より)
審査カード8軸 × 10点
治安5/10公式に「治安が悪い」街+リーグ包囲テロ+暴走族
気候7/10四季がある(情緒◎)。砂嵐・冬季凍結のハザードも
野生5/10夜は住民全員が屋内の町・魂の塔
交通10満点橋5本・海底トンネル・地下鉄・空港・高速道路。唯一の満点
生活9/10都市の個性分化が最高。道路18本で都市間が近い
食9/10火曜限定アイス・ジム併設レストラン・マーケット
経済9/10他地方への輸出産業・ジムリーダーの兼業
教育8/10博物館ジム・ミュージカル・季節研究所
合計 62 / 80

事件の話

イッシュで事件を起こしたのは、思想を掲げる組織「プラズマ団」でした。主張はポケモンの解放。金でも領土でもなく、思想を動機にした犯行は系列初で、その象徴がリーグの眼前に地中から湧き出た城による包囲です。

日常の治安にも、厄介な問題があります。ある都市はゲーム内で公式に「治安が悪い」と明言されるほどで、一夜で資産が溶ける高騰都市です——しかもこの土地、バージョンによって姿を変え、対になるもう一つの顔は森と清流の保守的な村。

ブラックシティ金さえあれば何でも手に入る。だが物価は破格の高騰。公式に「治安が悪い」と明言される高騰都市
VS
ホワイトフォレスト同じ場所に、森と清流の残る保守的な村。住民は暮らしの中に自然を飼っている

ほかにも暴走族の徘徊や、夜になると住人全員が屋内に引きこもる町(原因は町の裏に広がる大穴の「災い」伝承)など、日常のクセも強めの地方です。

住み心地の話

それでもこの地方が2位にいられるのは、生活インフラの近代化が歴代最高だからです。

交通は唯一の満点です。まず橋が5本あり、その一本一本に設定があります。

  • スカイアローブリッジ — 地方最大の大橋
  • 観覧車の跳ね橋
  • 下を地下鉄が走る鉄橋
  • ビレッジブリッジ — 水害と戦った末に、橋の上に家を建てた町
  • マリンチューブ — 海底を強化ガラス張りのトンネルで抜けると、もう次の街

さらに地下鉄はネットワークを形成し、車両基地の町は地下鉄でしか行けません。空港もあれば、高速道路も走る。道路の本数こそ最少級の18本ですが、これは都市間の距離が近い証拠で、移動の快適さでは右に出る地方がありません。

都市の個性も際立っています。高層ビルが並ぶ大都市、遊園地とミュージカルの娯楽都市、避暑地の別荘町、機関車の線路跡を残すレトロな町、車両基地の町——ニューヨークがモチーフだけあり、多文化な個性が都市ごとにはっきり分かれています。

食の看板は、毎週火曜日に販売されるご当地アイスでしょう。一人一個限定で、売り切れるほどの人気——しかも冬季は販売中止になる。火曜限定に季節休止まで重なる、希少性の二段構えです。「火曜日に並ぶアイス」という具体性では、歴代ご当地グルメの決定版です。

100円ヒウンアイスの価格
(状態異常をすべて回復)
火曜限定販売曜日・一人一個
冬季休止季節が来ると売らない
ヒウンアイスを食べる場面
アニメでも登場したヒウンアイス(アニメ画像より)

しかもこの地方、ジムの中にレストランがあり、ジムリーダーは料理人を兼ね、別のジムリーダーは企業の経営者、別のジムは博物館と一体化しています。仕事とバトルの距離が近い社会です。

経済は国際的です。農業で収穫した作物をカントー・ジョウトへ輸出する産業が公式に存在する——他地方への輸出が明記されたのは系列でここが初です。遠い外国との貿易を営む、開かれた経済圏です。

ここだけの話

四季のある暮らし

イッシュには季節システムがあります。春夏秋冬で風景も出現するポケモンも音楽も変わる。四季のある暮らしを、データとして体験できる唯一の地方です。ただし冬季は湿地の水たまりが凍結し、山の地形自体が積雪で変わる——情緒と引き換えの寒さもあります。「四季があるだけで住みやすい」という価値観を、多くの日本人は持っているはずです。それをゲーム内で実現した土地、それがイッシュです。

ひとことで言うと

交通・生活・食・経済の近代化No.1。だが公式「治安が悪い」街と夜の外出禁止の町が重くのしかかり、タイブレーク(治安)で王座を逃した。最多得点圏内でありながら2位、という最も悔しい着地。

参考

ヒスイ地方タイムマシンで行ったら最悪だった

19 /80
「降りた瞬間、あなたが狩られる側です」
ヒスイ地方のマップ
ヒスイ地方のマップ(『ポケモンレジェンズ アルセウス』・ゲーム画像より)
審査カード8軸 × 10点・参考記録
治安5/10組織の暴力はないが、事件規模は宇宙再創造級。警察・行政なし
気候2/10ハザード(極寒・高山)があるのに、除雪も予報もない
野生1過酷野生が人を直接攻撃。負けると金と道具を失う
交通2/10道路・鉄道・港なし。拠点はキャンプ網のみ
生活1過酷集落が1つ。ショップ・センター・病院なし
食2/10グルメ文化なし。道具は自作
経済2/10行商人ベースの流通のみ
教育4/10学校なし。「調査」が社会的事業
参考記録 19 / 80

ヒスイだけは、公平のために参考記録とします。何しろ舞台は「まだ、人とポケモンが親密に暮らすことが珍しかった、遠い昔の時代」——後のシンオウ地方になる土地です。現代の地方と同列で採点するのは、縄文時代と令和の東京を比べるようなものです。

では、その「縄文時代」の暮らしはどうだったか。

野生ポケモンが人間を直接襲ってきます。 攻撃を受け続けて倒れると、道具と所持金の一部を失ってキャンプに戻されます。道端のポケモンに殺意がある世界です。集落はコトブキムラの一箇所のみで、中にあるのはポケモンを預ける牧場と技を教える訓練場。道路なし、鉄道なし、ショップなし、ポケモンセンターなし。道具は素材から自作するしかありません。

コトブキムラの集落
ヒスイ唯一の集落・コトブキムラ(ゲーム画像より)
メモ: 道具に文化が見える

この時代の道具は味わい深くて、不思議なアメのモチーフは京の飴菓子、ピッピの人形はこけし型。後のシンオウ文化の原型が、道具の形で残っています。

事件の規模だけは、参考記録とは思えないほど大きい。各地でポケモンが凶暴化する「時空の裂け目」の黒幕は、日頃から主人公に捕獲のコツを教えてくれる親切な行商人でした。その正体は古代シンオウ人の末裔で、彼が目論んでいたのは、伝説のポケモンを狂わせて神を引きずり出し、宇宙を消して新たな宇宙を作り直すこと。親切な行商人が実は宇宙の再創造を企てていた——この構図は、冷静に考えると歴代最大級の事件です。

タイムマシンがあったとして、絶対に降りてはいけない地方。 それがヒスイです。参考記録19点。なお、この土地で図鑑を完成させる「調査」を続けた人々の記録が、後のシンオウ地方の文化の基礎になっていく——最悪の住環境の中で、後世の「神奥」の原型が作られたという事実は、歴史の皮肉として味わい深いものがあります。

1位

パルデア地方王座に輝いたのは「学校の地方」だった

62 /80
「創立805年の学校が生活の中心。危険は大穴に隔離済みの、できた地方」
パルデア地方のマップ
パルデア地方のマップ(ゲーム画像より・中央の大穴がエリアゼロ)
審査カード8軸 × 10点
治安9/10大人の犯罪組織がほぼ存在しない。事件は「学校の問題」と「個人の研究」
気候8/10砂漠・雪山はあるが災害イベントは控えめで穏やか
野生8/10最危険区域(パラドックス生息の大穴)が中央に隔離済み
交通6/10移動の主役が専用の伝説ポケモン。庶民の足は謎
生活8/10全寮制の学校・埋め立て都市・競りの町
食6/10珍しいスパイスと名物食堂。看板は自分で作るサンドイッチ
経済7/10巨大企業不在。農業・市場・芸術の穏やかな構成
教育10満点創立805年・全寮制・単位制・7教科。唯一の満点
合計 62 / 80

事件の話

まず結論から。この地方には、大人の犯罪組織がほぼ存在しません。騒ぎの主体は生徒の集団「スター団」で、発端は深刻ないじめへの対抗、結末は奉仕活動による和解と勉強会——事件の始まりも終わりも、学校の中で完結します。

唯一の悲劇はある研究者の物語。大穴の研究所にいた博士はすでに他界しており、研究を続けていたのは本人を模したAIでした。危険なタイムマシンを止めるため、AIは自ら主人公に撃破を依頼する——世界を脅かしたのは組織ではなく、一人の研究者の孤独。歴代で最も静かにして、最も切ない事件です。

住み心地の話

パルデアの安全対策は、ひとことで言えば見事です。過去や未来から来た危険なポケモン(パラドックスポケモン)は、地方の中央にある巨大クレーターの内部「エリアゼロ」に隔離されています。煌びやかな結晶の点在する大穴の中——危険なものを、きちんと柵の中に入れている。できた地方です。

そして最大の武器が、教育です。

805年アカデミーの創立からの歴史
7教科生物学・数学・歴史・バトル学・家庭科・言語学・美術
10代〜老人まで全寮制+単位制で学ぶ生徒の幅

地方中心の都市にあるのは、創立805年・全寮制・単位制の私立学校。教職員には元ジムリーダーや現役の四天王が名を連ね、履修科目は生物学・数学・歴史・バトル学・家庭科・言語学・美術の7教科。制服の改造は禁止ですが、髪型や小物は自由。厳格さと自由が同居した開放的な校風だと資料にあります。主人公の冒険自体が「宝探し」をテーマにした課外授業として始まる。学校が、冒険も生活も、全部の中心にある社会です。シリーズでここまで学校を描き切った地方は他にありません。

オレンジアカデミーの校舎
創立805年のアカデミー校舎(ゲーム画像より)

生活圏も穏やかです。

  • 最大都市: 移動のワープ地点が3か所
  • 海沿いの町: 朝から競りが開かれる
  • 砂漠の縁の都市: 水流エレベーターで上下する崖の町
  • 農業の町: オリーブを転がす行事がある
  • 芸術の町: 花が売られている

巨大企業が土地を支配する構造が存在しない、シリーズでも珍しい構成です。

食は、好みの分かれるところでしょう。強力なヌシポケモンに守られた「ひでんスパイス」、ジムリーダーが常連の食堂「宝食堂」——食をめぐる物語はあるのに、看板グルメが自分で作るサンドイッチなのです(2体の伝説ポケモンがサンドイッチを食べる場面の記録が残るほどには、食文化の中心にある)。外食ではなくピクニック。暮らしの豊かさを手作りに見出す、というこの地方の価値観が、食にも表れています。

弱点をあえて挙げるなら、交通です。移動の主役は、専用の伝説ポケモンに乗るライド技——陸を駆け、海を渡り、空を滑空する。一般の人たちが普段何に乗っているのかは謎のままです。ワープ地点はあるものの、日常の移動インフラとしては、歴代の鉄道網や橋梁文化に一歩譲ります。

ここだけの話

一番の武器は「学校」

タイブレークの治安で制したとはいえ、パルデアの優勝には必然があります。

この地方では、危険が「管理」されている。パラドックスポケモンは大穴に隔離され、若者の事件は学校の制度の中で処理され、唯一の世界級リスク(タイムマシン)も停止済みです。事件の後には勉強会が開かれる。事件が起きても、社会がそれを回収する仕組みがある。それは、組織を壊滅させて終わる他地方との、決定的な違いです。

そして、805年続いた学校が生活の中心にあるということは、「学ぶ場所が、守る場所でもある」ということです。冒険の世界ポケモンにあって、一番住みやすいと判定されたのは、教育制度が整い、単位を取りながら暮らせる土地でした。旅の終着地点は、家でも城でもなく、教室なのかもしれません。

ひとことで言うと

治安・気候・安全設計・教育の4軸でハイスコア。交通と食の独自路線を差し引いても、タイブレークを制しての初代王者です。

部門賞 — 数字では見えない各地方の顔

最後に、採点からこぼれ落ちた「部門賞」を発表します。

治安部門

最良

ガラル — 組織的不在はシリーズ唯一。事件は盗難と応援団の迷惑行為止まり

最悪

シンオウ — 湖爆破・町爆破未遂・時空破壊。計画の凶悪さでは誰も追随できない

気候部門

最良

カントー — 天候の変化が一切ない、唯一の「無天候」地方

最悪

シンオウ — あられ・吹雪・霧・砂嵐・火山灰の全部盛り。しかも雪道は自転車不通

交通部門

最良

イッシュ — 橋5本・海底ガラストンネル・地下鉄・空港・高速道路。唯一の満点

最悪

カントー — 鉄道なし・船は年1回・自転車100万円で現金購入不可

食部門

最良

ガラル — カレー図鑑。ご当地グルメを図鑑で数える食品コレクション文化の完成形

特別賞

イッシュ — 火曜・一人一個限定で売り切れるご当地アイス。具体性では歴代最高

最悪

カントー — レストランはあるが入れない。屋上の自販機3種が食文化の殆ど

住環境ヤバい町賞(ワースト3)

1位

ノモセ(シンオウ) — 町の4分の1が水没

2位

キナギ(ホウエン) — サニーゴの群れの上に筏を並べた町

3位

スパイクタウン(ガラル) — ダイマックスのパワースポットがなく、センター以外の施設なし

妖怪・オカルト部門

該当

シオン(カントー)の悪霊、森の洋館(シンオウ)の動く絵、そしてカゴメ(イッシュ)の「夜は全員屋内」風習。土地というより次元の問題。

教育・文化部門

最良

パルデア — 創立805年・7教科・単位制・全寮制。学校が社会の中心

最悪

ヒスイ — 学校なし。教育は「図鑑を完成させる実地調査」のみ

事件後の再生部門(新設)

受賞

アローラ(解散したボスが相撲の修行を再開)とジョウト(偽装店舗だった土産物屋が普通の店に戻る)。事件を起こした土地が回復まで描かれる稀有な例。

結論 — 住みやすさの正体は、「事件が起きにくいこと」だった

10地方を審査して、はっきり見えたことがあります。

住みやすい地方とは、言い換えば「事件が起きにくい地方」だった。

下位の地方ほど世界滅亡級のイベントを抱え、上位の地方ほど組織そのものが存在しないか、小規模で学校の問題に収まっています。美しい海も、巨大な百貨店も、最新の地下鉄も、「今日も何も起きない」という前提の上で初めて価値が出る。ランキング上位の顔ぶれを見れば、それは明白です。

そして、王者パルデアの顔が「学校」だったことは象徴的です。事件が起きても社会が回収する仕組みを持ち、危険なものは大穴に隔離し、805年かけて教育制度を育ててきた。冒険の世界ポケモンにおける「住みやすさ」とは、結局のところ、社会が成熟していることなのだと思います。必要なのは伝説の力ではなく、単位制と勉強会と、たまにピクニックでした。

最下位のシンオウにも、言い残したことがあります。この地方は文化・福祉・エネルギーの素材が最高級でした。ヨスガの「人にもポケモンにも優しい町」という思想は、実はパルデアに先立つ「住みやすさの宣言」です。事件と気象さえなければ、シンオウは間違いなく表彰台に立っていました。何でも揃っているのに全部が過酷——それがシンオウの、愛すべき宿命です。

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